『八日目の蝉』は女性の成長を述べている物語である。本筋は二つある。主人公の一人は誘拐犯の 野々宮希和子、もう一人の主人公は大人になった秋山恵理菜である。恵理菜が六ヶ月の時、父の元愛 人希和子に誘拐された。4 年の逃亡期間を経て、希和子は警察に逮捕された。同時に恵理菜は実の両 親のもとに帰った。しかし彼女は両親との関係が一貫してよくなかった。それから早く家を出て一人 暮らしを始めた彼女は妻帯者の岸田と情を通じた。身ごもることに気付いてから、彼女は責任を取り

たくない岸田と別れ、昔の仲間の安藤千草と一緒に、もう一度希和子との暖かい記憶を探していき、 新しい人生を始める。

同名の映画とドラマが日本で評価されたので、原作の小説も一時的に大人気になった。しかし、日 本では、フェミニズムからこの小説を研究した成果が見つけられない。そして、中国では、フェミニ ズムからこの小説を研究した論文があるが、数は少ないことがわかる。以上のように、この小説に対 する研究は決して十分とはいえない。

1.2 研究目的と意義

本論文の目的は、『八日目の蝉』の誘拐事件の経緯から、主要な人物間の関係と男女の人物イメー ジを分析し、女性が探索した人生の道を説明し、その中の女性の家庭と婚姻観念の状態を明らかにす るところにある。それから女性にとっての良い人生を探求することができると思われる。

本論文は、フェミニズムという角度から『八日目の蝉』における男女不平等の現象と女性の未来に 対する探索を分析し、それから性別の不平等がもたらしたデメリットを明らかにし、伝統的な婚姻と 家庭に束縛されている女性を解放し、またフェミニズムに対する研究の視野を拡大することにも少 し役に立てると考えられる。

2.  主要な人物間の関係の分析

2.1    フェミニズムから見る夫と妻

2.1.1 秋山丈博と秋山恵津子

秋山丈博と秋山恵津子は誘拐された恵理菜(薫 1)の実の両親である。しかし、この二人の婚姻は名 ばかりで実質がない。恵理菜が誘拐される前、秋山丈博はずっと野々宮希和子と不倫の関係をもって いた。何度別れようとしても彼らはわかれることができなかった。この事実に気が付いてから、復讐

として恵津子も別の男と不倫を犯した。だが、妊娠した後、夫婦二人とも愛人との関係を断絶した。 しかし、不倫に対し、この二人の考えには差がある。秋山丈博は愛人の希和子と別れたら、自分がい い夫、いい父親になれると思い、不倫ということに罪悪感が少なかった。彼より、恵津子は自分の不 倫について、多少とも良くない予感を抱いていた。この差は小説の中から見ることができる。それは、

最初に夫婦二人は希和子の姿を疑っていなかったということだ。秋山丈博の心には元愛人 の希和子 の容疑は一切なかった。それに対して、恵津子は自分の元愛人 B が恵理菜を誘拐した一番の容疑者 だと疑っていた。

この差から不倫関係の中の男女の不平等をおしはかることができる。夫の秋山丈博は女 である希 和子が彼の家庭に危害を加えるとは思わなかった。それに対し、妻の恵津子は最初から男である自分 の元愛人  B  が分をわきまえる人ではないと思っていた。このほか、希和子は堕胎して丈博と別れて

から、陰で秋山夫婦一家をこそこそと観察するしかなかった。しかし、恵津子の情夫 B は別れた時 に、恵津子をおびやかし、別れの慰謝料を要求した。最後に情夫の嫌がらせを避けるために恵津子は 引っ越しをしなければならなかった。この点について、二人同時に婚姻関係にある状態で浮気をして